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チャールズ・デクスター・ウォード事件

チャールズ・デクスター・ウォード事件

The Case of Charles Dexter Ward

ハワード・フィリップ・ラヴクラフト 全集2 クト10
概要
登場人物
あらすじ

本作は51,500語の短めの長編小説で、1927年1月末から3月1日にかけて執筆された。初出は抄訳版がWeird Tales誌1941年5月号と7月号に掲載され、その後Beyond the Wall of Sleepに収録された。校訂版がThe Miscellaneous Writingsに、詳註版がThe Dunwich Horror and Othersに収録されている。

この物語の着想は1925年にさかのぼる。当初、ラヴクラフトはセイラムを舞台にした探偵小説風の作品を構想していたが、ガートルード・セルウィン・キムボールの「植民地時代のプロヴィデンス」を読んだことで、物語の舞台が変更された。さらに、ラヴクラフト自身のプロヴィデンスへの帰郷も影響を与えたと考えられる。

物語の重要な要素には、様々な出典がある。冒頭のボレルスの引用は、ラヴクラフトが所有していたコットン・メイザーの『アメリカのキリストの偉業』からの引用である。また、主人公チャールズ・デクスター・ウォードの住居のモデルは、プロスペクト通りにある実在の邸宅を基にしている。

文学的影響としては、ウォード・デ・ラ・メアの小説『死者の誘い』が挙げられる。ラヴクラフトは1926年夏にこの作品を読み、そのテーマを独自の方法で取り入れたと考えられる。

主人公ウォードの描写には自伝的要素が多く含まれているが、外見的特徴の多くは実在の人物、ウィリアム・リピット・モーランを参考にしている。モーランとラヴクラフトは直接の面識はなかったものの、ラヴクラフトが通りでモーランを見かけた経験が物語に反映されている可能性が高い。

物語の構造は、ラヴクラフトの以前の作品『レッドフックの恐怖』の改良版とも言える。主要な要素や登場人物の関係性に類似点が見られるが、より洗練された形で再構築されている。

しかし、ラヴクラフト自身はこの作品を高く評価しておらず、「自意識過剰な好古趣味」と批判的に捉えていた。そのため、生前に出版の努力をほとんどしなかった。作品が出版されたのは彼の死後で、友人たちの尽力によるものだった。

初版の出版後、この作品は単独で様々な出版社から再版され、ラヴクラフトの重要作品として認識されるようになった。

20世紀

  • チャールズ・デクスター・ウォード…26歳、1902年生まれ
  • ウィレット医師…チャールズの専属医師
  • アレン博士

【舞台】

  • プロヴィデンス 1919年〜1920年

18世紀

  • ジョゼフ・カーウィン
  • ゴメス
  • シモン・オーン
  • エドワード・ハッチンソン
  • イライザ・カーウィン夫人…ジョゼフの妻
  • デュティ・ティリンガスト船長…イライザの父
  • エズラ・ウィードン…イライザの婚約者

【舞台】

  • 1770年頃

 

1692年、謎めいた人物ジョウゼフ・カーウィンがセイラムからプロヴィデンスへと移り住んだ。半世紀が過ぎても彼の容姿に変化がないことから、近隣住民の間で奇妙な噂が飛び交うようになる。

カーウィンは並外れた魔術師であり、死者蘇生の研究に没頭していた。彼が参考にしている書物の「精髄をなす塩」という不吉な言葉に線が引かれており、その真意は計り知れなかった。

評判を取り戻そうとカーウィンは、配下の船長の娘イライザと強引に結婚。この行為は、イライザの恋人の怒りを買うこととなり、後にカーウィンは殺害されてしまう。

時は流れ、1918年。若きチャールズ・デクスター・ウォードが物語の主人公となる。ある日、自宅の古い肖像画に目を留めたウォードは、そこに描かれた人物が自分と瓜二つであることに衝撃を受ける。その人物こそ、かの悪名高きカーウィンだった。

先祖との驚くべき繋がりを知ったウォードは、カーウィンの魔術と知識を蘇らせようと、狂気じみた研究に没頭していく。しかし、ある日を境にウォードの性格が一変する。

過去の闇に埋もれていた魔術師の遺産が現代に蘇り、禁断の知識を追い求めた若者の運命が大きく狂い始める。ウォードの研究が進むにつれ、人知を超えた古の存在が目覚め始める。人類の理解を遥かに超えた、名状しがたき邪神の気配が、この世界に徐々に満ち始めていたのだった…。

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