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無名都市

無名都市

無名都市 The Nameless City

全集3 新訳2 ハワード・フィリップ・ラヴクラフト
概要
登場人物
あらすじ

本作は5,070語の短編小説で、1921年1月中旬から下旬ごろの執筆された。初出1921年Wolverineの11月号、再掲は1936年Fanciful Talesの秋号、1938年WTの11月号である。単行本初収録はOで、校訂版がD、詳註版がDWHに収録されている。

この物語のほとんどがラヴクラフトの夢に基づいており、その夢の着想源はロード・ダンセイニの『世界の涯の物語』中の「音ひとつない奈落の闇」という一節や、彼の所有していたブリタニカ百科事典第9版の「アラビア」の項目から来ていた。また、後の「備忘録」に自身の見た夢の記述があり、「奇怪な地下室にいる男——青銅の扉を押し破ろうとする——流れ込んできた水に巻き込まれる」とある。

アブドゥル・アルハザードが初登場した作品だが、まだこの時点では『ネクロノミコン』の著者であるという設定はない。また、本作の構想は『狂気の山脈にて』に再利用された。

  • アブドゥル・アルハズレッド…初回作
  • 爬虫類のような生物…蛇人間と同類かは不明

 

遥か遠きアラビアの砂漠の彼方に、忘れ去られた無名の都市があった。一人の勇敢な考古学者が、その神秘に満ちた廃墟を目指していた。この都市こそ伝説的な詩人アブドゥル・アルハザードの夢に現れた場所と同一だった。

都市に足を踏み入れた瞬間、考古学者は奇妙な違和感に襲われる。建物の天井が異様に低く、人間が直立して歩くことすらままならない。まるで、はるかに小柄な、あるいは這うような生き物のために造られたかのようだ。この非人間的な建築様式に、考古学者の心は激しく動揺する。

身をかがめ、ときに這いつくばりながら探索を続ける考古学者。迷宮のような街路を進むうち、彼は地下に隠された古代の寺院を発見する。薄暗い石室の中、彼の目に飛び込んできたのは、不気味な装飾が施された一つの箱。

箱に触れる考古学者。開けるべきか、それとも置いていくべきか。しかし、真実を求める探究心が、ついに決断を下させる。

おそるおそる蓋を持ち上げた瞬間、彼の目に映ったものは―。

この瞬間から、考古学者の運命は、そして人類の認識さえも、大きく変わろうとしていた。アラビアの砂漠に眠る古の都市が秘めていた真実、そしてかつてこの地に住まった得体の知れない種族の正体とは、果たして何だったのか。

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