本作は1966年、”The Dark Brotherhood and Other Pieces”に収録された。
「外界の住人」という、人間の皮膚で作った仮面をつけ、外科手術で人間の姿に変身した異形の存在が地球に来て人類と交わろうとするという設定は、ラヴクラフトの覚書の「C・A・Sの提案」として記されていたものに由来している可能性がある。
この作品では、エドガー・アラン・ポーに生き写しの人物が登場し、その正体の解明が物語の中心となっている。ラヴクラフトがポーを最も敬愛した作家だったという事実も、この物語に深みを与えている。
オーガスト・ダーレスは1949年、『アーカム・サンプラー』秋季号に『二人の紳士の邂逅』という、ポーとラヴクラフトの架空会見記を書いており、二人の作家への敬意を表している。
- アーサー・フィリップス
- ローズ・デクスター
- アラン…老紳士
【舞台】
- ワシントン
アメリカの丘の上に建つ廃屋が不審火によって焼失する奇妙な事件。多くの目撃情報が寄せられるも、どれも信ぴょう性に欠ける中、アーサー・フィリップスという人物が火災の原因と顚末を記した手記を提出した。当局が手記に登場する人物全員を事情聴取したところ、フィリップスとデクスターの関係だけ証明され、他の事実は裏づけがなかった。
不治の病を抱えるフィリップスは、夜な夜な街を徘徊することを習慣としていた。日中は祖父の書斎で読書に耽り、幅広い学問を身につけていた彼は、ベネフィットストリートやポー通りをよく歩いていた。周囲の友人が次々と離れていく中、彼の前に現れたのはローズ・デクスターという人物だった。
ローズとの出会いにより、フィリップスのプロヴィデンスでの深夜徘徊は二人連れとなる。そして数ヶ月後のある夜、彼らは一人の紳士から声をかけられる。フィリップスはこの紳士に対して奇妙な既視感を覚えた—どこかで見たことがある、いや、会ったことさえあるような感覚。
その紳士・アランはポーの歩いた墓地への道を尋ね、二人は案内役を買って出る。墓地に着きアランと別れた後、フィリップスがローズに既視感について打ち明けると、ローズは衝撃の事実を告げた—「図書館にあるエドガー・アラン・ポーの肖像画とそっくりだ」と。
さらにフィリップスは、アランが会話の間中、表情を一切変えなかったという不気味な事実を思い出す。
彼らが案内した紳士の正体と、後の火災事件との間には、どんな因果が隠されているのか。