
【2025年版】「忘却より」入門|あらすじ・登場人物・おすすめ版まとめ
Ex oblivione
概要
この作品は715語の散文詩で、1920年末か1921年初頭に執筆されたと推測される。初出は1921年、『United Amateur』の3月号にウォード・フィリップス名義で、単行本初収録は『Beyond the Wall of Sleep』、校訂版が『Miscellaneous Writings』に収録されている。
作品の中心テーマである「生は死よりも恐ろしい」という考えは、ラヴクラフトの散逸した作品「生と死」の主題でもあったと考えられている。この思想の背景には、当時ラヴクラフトがショーペンハウアーの著作を読んでいたことが影響しているとされる。
例えば、ラヴクラフトの「ダゴン弁護論」(In Defence of Dagon)には、
「忘却に勝るものはない。なぜなら、忘却の世界では、いかなる願望も実現されるからである」
という一節がある。この考え方は、生よりも死や忘却を肯定的に捉える本作品のテーマと通じるものがある。
登場人物
- 語り手
舞台
- ザカリオン
あらすじ
現実世界に失望し、日々の憂鬱に押しつぶされそうな一人の男がいた。彼は夜ごと、夢の中で異国の世界を彷徨い歩く。そこでは、現実では味わえない驚異と美に満ちた光景が広がっていた。
しかし、目覚めた後の灰色の日常はますます耐え難いものとなっていく。やがて彼は、より鮮明な幻視を求めて麻薬に手を染める。その効果は絶大だった。夢の中で彼は「ザカリオン」と呼ばれる神秘の都にたどり着く。
そこで彼が発見したのは、古の賢者が残した一枚のパピルス。そこには、想像を絶する驚異への入り口かもしれない「青銅の小門」のことが記されていた。高い障壁に嵌められたその門は、未知の世界への扉なのか、それとも破滅への道なのか。
彼は門を開くため、さらに大量の麻薬を摂取し始める。現実と幻想の境界が曖昧になっていく中、ついに彼は門の前に立つ。
そして、その扉は、ほんの少しだけ開いていた。
果たして門の向こうには何が待っているのか―。
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