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【読了ガイド】『真ク・リトル・リトル神話体系2』│収録作品・購入方法まで紹介

【読了ガイド】『真ク・リトル・リトル神話体系2』│収録作品・購入方法まで紹介

真2

本書は、H・P・ラヴクラフトが創始したクトゥルー神話の短篇13篇を集めたアンソロジーである。合計12名の作家による作品が収録されており、ダーレス&スコラー、C・A・スミス、D・ワンドレイ、F・B・ロング、R・ブロックなど、神話体系を築いた執筆陣の作品を読むことができる。収録作品には「納骨堂綺談」「魔導士の挽歌」「脳を喰う怪物」「妖蛆の秘密」など、初期神話作品群が含まれている。

  • 納骨堂綺談」 A・ダーレス&M・スコラー
    • 弁護士のエリックはジョイスからの依頼で、ブラックプールからロンドンへ向かっていた。
      ジョイスの叔父アーサーが行方不明になったのだという。
      アーサーが最後に目撃されたのは、ジョイスの親戚ヒラリーを訪ねた日のことだった。
      その夜、深夜2時頃に突然の叫び声と物音が聞こえ、慌てて駆けつけるとヒラリーが倒れていた。
      どうやらアーサーに薬を盛られ眠らされていたようで、それ以来アーサーの姿を誰も見ていない。
      ジョイスの屋敷は曽祖父が建てたものだが、もともとは僧院か聖堂で、かつて邪教崇拝に使われていたという。
      曽祖父の遺言には屋敷の地下深くに納骨堂があり、隠された通路でそこへ行けると書かれていた。
  • 魔導士の挽歌」 C・A・スミス
    • 王国の権力者神官モルギと、魔道士エイボンの確執は誰もが知るところだった。
      モルギの追及から逃れるため、エイボンは邪神ゾタクアの助言で異界への扉をくぐり惑星サイクラノーシュへたどり着く。
      執念深いモルギも追跡の手を緩めず、見知らぬ世界で再会した二人は不本意ながら旅を共にする。
      神フジウルクォイグムンズハーから、エイボンに託された謎めいた言葉「イクイ・オドシュ・オドフクロンク」を神託と受け止める。
      エイボンが土星人ブフレムフロイム族にmその言葉を告げると賓客として歓待される。
      しかし文化の違いに戸惑い逃亡を決意する。
      神託の真の意味とは何か。
  • 足のない男」 D・ワンドレイ
    • 中央アフリカで考古学的調査を行おうとする語り手は、ウガンダへの旅の途中で両足を失った男性リチャーズと出会う。
      リチャーズは旅のルート変更を強く勧めるが、語り手はその進言を聞き入れなかった。
      過去に足を失った探検家の話を思い出し、その探検家が目の前のリチャーズであることが判明する。
      リチャーズは自身の壮絶な体験を語り始める。
      かつて彼は同行者のアングレイと共にコンゴへ探検に向かい、リチャーズは鉱床の調査を、アングレイは珍しい収集品を求めての旅だった。
      月霊山脈にたどり着き別々に探索を始めるが、山を登る過程で周囲に生物の気配が一切ない不自然さに違和感を覚え、山頂で得体の知れない人影を目撃する。
  • 脳を喰う怪物」 F・B・ロング
    • 太平洋の海原で、モーニング・スター号の乗組員たちが漂流する幽霊のようなボートを発見した。
      スティーヴンとジム航海士が慎重に接近すると、ボート内にメアリー・オブライエン号の船員の凄惨な遺体が横たわっていた。
      ヘンダースンの遺書には、脳だけを貪る謎の神話生物の存在と、船員全員が殺されたこと、そして彼だけは身体と脳を分離させられ、深海の闇に連れ去られたという常軌を逸した物語が記されていた。
      最初は信じられなかったスティーヴンらだが、その夜モーニング・スター号を包む不気味な静寂は、未知の存在が忍び寄っていることを告げていた。
      海は恐怖の前兆と共に静かに揺れていた。
  • 羅睺星魔洞」 A・ダーレス&M・スコラー
    • アメリカの探検隊が中央アジアビルマの秘境に挑むが、想像を絶する恐怖へと一変する。
      突如として「チョー=チョー人」と呼ばれる矮躯の人外種族に襲撃され、唯一生き延びたエリック・マーシュは、伝説の廃都アラオザルにたどり着く。
      そこで彼はチョー=チョー人に捕縛され、既に死亡したはずのフォ=ラン博士と驚愕の再会を果たす。
      博士は誘拐され、古の双子神を復活させる儀式に加担させられていたという。
      絶体絶命の窮地に陥った二人は長老エ=ポオを騙してアラオザルからの脱出に成功するが、それで全てが終わったわけではなかった。
  • 「奈落より吹く風」 A・ダーレス
  • 屍衣の花嫁」 D・ワンドレイ
    • 何一つ不足のない人生を歩んでいた私だが、幼い頃から悪夢に苛まれ続けていた。
      数年前、愛する婚約者ミリアムがいたが、結婚式前夜に彼女を乗せた飛行機が墜落し、私たちの未来は一瞬にして闇に沈んだ。
      それから夢にミリアムが現れるようになり、彼女は私を黒く淀んだ海へと誘って腐敗した水面へ消えていく。
      私が追いすがるように足を踏み入れると、漆黒のドロドロとした何かが体を絡め取った。
      恐怖で目覚めた私の体には、夢の中で見た黒い物質が確かに付着していた。
      それ以来、ミリアムは執拗に夢に現れ続け、次第に夢と現実の境界が曖昧になり、私は深い狂気の淵へ引きずり込まれていく。
  • 暗恨」 R・F・シーライト
    • 主人公ウェッソン・クラークは親友マルタッキの妻ノンナと不倫関係にあり、マルタッキの死後は関係を公にできると期待していた。
      クラークは遺言書と共に「アル・トールの小箱」と呼ばれる遺品を受け取る。
      古美術に関心があるクラークは、この小箱が極めて稀少な品であることを即座に見抜いた。
      しかしマルタッキの遺書には、この箱に手を触れずに保管するようにという明確な忠告が記されていた。
      遺書の警告を無視したクラークは執拗に箱の開封を試みるが、見慣れぬ合金で作られた箱はあらゆる開封の試みを拒絶し続けた。
      欲望と焦燥に駆られたクラークはついにペーパーナイフで暴力的な開封を決意し、長い抵抗の末に箱は開かれたが、そこには何も入っていなかった。
  • 彼方よりの挑戦」 H・P・ラヴクラフト他
    • 地質学者の私は夏のキャンプ中、小動物を追い払うために手にした石ころが完全な立方体のクリスタルであることに驚く。
      内部には楔形文字に似た不可思議な記号を刻んだ円盤が浮かんでおり、クリスタルの年代と文字の年代が明らかに矛盾していた。
      クリスタルは成長を始め、内部の円盤が自発的に動いて未知の音声が響く。
      観察を試みた瞬間、意識は深い闇へ引きずり込まれ、別次元の体験をする。
      目覚めた時、私の腕はもはや思うように動かなくなっていた。
      その時「エルトダウン陶片」を思い出す。宇宙人が立方体鉱石を通じて精神転移による時間旅行を行っていたという。
  • 妖蛆の秘密」 R・ブロック
    • 16世紀ブリュッセルの錬金術師ルドウィク・プリンは、「星の送りし下僕」と呼ばれる使い魔に仕え、異端審問所に捕らえられる。
      獄中で著した秘密の書物『妖蛆の秘密』は処刑前に持ち出された。
      現代、怪奇作家の主人公は友人の警告を無視してこの禁断の書を古書店で発見。
      ラテン語の翻訳を友人に依頼するが、呪文を唱えた瞬間、目に見えぬ恐怖が解き放たれる。好奇心が招く予期せぬ結末が待ち受けていた。
  • 顔のない神」 R・ブロック
    • エジプトで偶像を探し求めるシュトゥガッツェ博士は、偶像のありかを知るハッサンを拷問にかけるが、彼は最期に何かを告げて息絶える。
      博士はかつて密輸に手を染めエジプトで盗みを働いて解雇されたが、再びカイロに住み違法な売買で生計を立てていた。
      遊牧民が偶然見つけたのは、エジプトの神々の像でありながら誰も見たことのない謎の偶像だった。
      ハッサンの最期の言葉から偶像のありかを知った博士は隊を組んで出発し、4日後についに巨大なスフィンクス像を発見する。
      しかし、そこにあるはずの顔はなかった。
      現地の人々が恐れとともに語る「ナイアルラトホテプ」という邪神の名。
  • 嘲嗤う食屍鬼」 R・ブロック
    • 精神科医である「私」のもとに、奇妙な悪夢に悩まされるショパン教授が訪れた。
      唇が薄く指が長い教授は、病気を患っているような皮膚をしていた。
      教授が語る悪夢では、夕暮れのミゼリコード共同墓地を訪れ、納骨堂の壁龕に隠されたレバーを引くと地下洞窟への道が現れる。地下を進むと白い餓鬼が死人を喰らう恐ろしい光景が広がり、餓鬼たちは獲物を求めて地下道を掘り進んでいるようだ。
      教授はいつも崖から落ちて夢から覚めるという。
      興味を抱いた私は教授とともに墓地へ向かい、真相を確かめるべく闇に包まれた納骨堂へと足を踏み入れる。
  • 探綺書房 」 H・ハッセ
    • ウィチャリィ医師は珍しい古本屋を見つけて中に入ると、突如として声を掛けられた。
      振り向くと4フィートほどの毛のない不気味な人間が立っていた。
      医師は目的の本の名前も自身の名前も告げていなかったにもかかわらず、その店員は医師の名を呼び、目的の本がここにはないと告げる。
      医師が探していたのは1800年に出版された「無名祭祀書」の原板だった。
      店員は代わりに『書』という本を持ってきた。
      それは店員のものでも誰のものでもない、まるで別の次元から現れたかのような不思議な代物だった。
      店員はこの『書』を医師に無料で手渡し、ただ「読む」ことだけを念押しして託した。
      果たしてその『書』の正体とは何か。

出版社:国書刊行会

発売日:2017/11/20

ページ数:320ページ

価格:紙版:1650円/電子版:1320円

良い点

  • 一世紀ほど経った作品でも今読んでも懐かしい怪奇小説を堪能できる
  • 手を変え品を変え読者を楽しませようという執筆陣の尽力が評価できる
  • 血生臭くならないように書かれており、不快感も少なく健全に作品を堪能できる
  • 後に「サイコ」を書くロバート・ブロックの習作時代を垣間見ることができて興味深い
  • 「死霊秘宝(ネクロノミコン)」の本文がそのまま掲載されており、ファンには堪らない
  • 異郷でのエピソードは毎度面白く、想像力を刺激する内容

気になった点

  • 初期の日本語訳のため読みづらい部分がある可能性
  • マイナーな作品ばかりで、邪神やクリーチャーなど登場する派手な作品はほぼない
  • 初めてクトゥルフ神話に触れる人には構成があまり優しくない
  • 冒険譚に近い作品が半数を占めているため、単純に怖さを求めて読み始めると物足りなさを感じる可能性

こんな人におすすめ

  • クトゥルー神話のマニアで、初期作品群を読み込みたい人
  • ラヴクラフト以外の神話作家の作品に興味がある人
  • ロバート・ブロックの初期作品に興味がある人
  • 「死霊秘宝(ネクロノミコン)」の内容を読んでみたい人
  • 血生臭くない健全な怪奇小説を求める人
  • 人間の限界や禁忌をテーマとした作品に興味がある人

本書は、ラヴクラフト神話体系の初期を支えた多彩な作家陣による作品群を通じて、神話の広がりと深さを実感できるアンソロジーである。

派手さはないものの、神話の根幹となる思想や世界観を丁寧に描いた作品群により、クトゥルー神話の本質的な魅力を味わうことができる貴重な一冊となっている。