01 02 03 04 05 06 07 08 09 10 11 12 13 14 15 16 17 18 19 20 21 22 23 24 25 26 27 28 29 30 31 32 33 34 35 36 37 38 39 40 41 42 43 44 45 46 47 48 49 50 51 52 53 54 55 56
01 02 03 04 05 06 07 08 09 10 11 12 13 14 15 16 17 18 19 20 21 22 23 24 25 26 27 28 29 30 31 32 33 34 35 36 37 38 39 40 41 42 43 44 45 46 47 48 49 50 51 52 53 54 55 56
トップ > 作品一覧 > 短編集 > 【読了ガイド】『クトゥルー7』│収録作品・購入方法まで紹介
【読了ガイド】『クトゥルー7』│収録作品・購入方法まで紹介

【読了ガイド】『クトゥルー7』│収録作品・購入方法まで紹介

クト7

『クトゥルー-7』は、H・P・ラヴクラフトとロバート・ブロックの特別な友情から生まれた作品群を中心とした短編集。

収録作品には、ラヴクラフトの「闇をさまようもの」、ブロックの「星から訪れたもの」「尖塔の影」、R・E・ハワードの「アッシュールバニパルの焔」など8編が含まれている。

特に「闇をさまようもの」は漫画化、「閉ざされた部屋」は映画化もされた人気作品として知られる。また、大瀧啓裕氏による「クトゥルー神話画廊Ⅰ」が本書籍でのみ読める独占収録となっている。

  • 星から訪れたもの」 ロバート・ブロック
    • 16世紀ブリュッセルの錬金術師ルドウィク・プリンは、「星の送りし下僕」と呼ばれる使い魔に仕え、異端審問所に捕らえられる。
      獄中で著した秘密の書物『妖蛆の秘密』は処刑前に持ち出された。
      現代、怪奇作家の主人公は友人の警告を無視してこの禁断の書を古書店で発見。
      ラテン語の翻訳を友人に依頼するが、呪文を唱えた瞬間、目に見えぬ恐怖が解き放たれる。好奇心が招く予期せぬ結末が待ち受けていた。
  • 闇をさまようもの」 H・P・ラヴクラフト
    • 怪奇小説作家ロバート・ブレイクは創作の舞台を求めてプロヴィデンスに引っ越してくる。
      街に佇む古い教会の不気味な魅力に惹かれた彼は、住民たちの忠告を無視して足を踏み入れる。
      光を拒絶するかのように閉ざされた教会内部で、ブレイクは禁断の書物、謎めいた多面体、そして「星の智慧派」協会の儀式の痕跡を発見する。
      知ってはならないものを見てしまった彼の好奇心が引き金となり、町全体を覆う未知なる恐怖が目覚め始める。
      怪奇小説作家自身が最も恐ろしい物語の主人公となる運命が待ち受けていた。
  • 「尖塔の影」 ロバート・ブロック
  • 永劫より」 ヘイゼル・ヒールド
    • 1878年、南太平洋の未知の島で発見された謎めいたミイラと古代の秘密が刻まれた巻物を納めた金属円筒。
      調査隊が再訪しようとした時、島は忽然と姿を消していた。
      遺物はボストンのキャボット考古学博物館に収められ、世界有数のミイラコレクションで名を馳せる。
      1931年、ムー文明オカルトブームが巻き起こり、神秘家ド・マリニーは「このミイラこそ古代ムーの神官トヨグだ」と主張する。
      1932年12月、警備員が殺害され、ミイラを盗もうとした2人の侵入者も変死体で発見されるが、その死体には言葉では表現しがたい奇怪な特徴があった。
  • 「アッシュールバニバルの焔」 R・E・ハワード
  • セイレムの恐怖」 ヘンリー・カットナー
    • 1692年のセイレムで魔女アビゲイル・プリンは、朽ち果てた三日月の角を持つ異形の神像に生贄を捧げていた。
      魔女裁判で火刑を宣告されるも、炎の中で燃え尽きることなく、狂気の笑みを浮かべたまま消えたという伝説が残る。
      作家のカーソンは創作のため、地元の人々が恐れるアビゲイルの呪われた家を執筆の場として選んだ。
      ある夜、一匹の鼠に奇妙な親近感を覚えて追いかけ地下へ降りると、壁の奥に隠された秘密の円形の部屋を発見する。
      寒色系の石で描かれたモザイク模様と、謎めいた円盤がはめ込まれた部屋にいると、創作意欲が湧き上がり、カーソンは執筆拠点をそこに移していく。
      彼は自分の行動が、300年前のアビゲイルの儀式を完成させる最後のピースになっていることに気づいていなかった。
  • イグの呪い」 ゼリア・ビショップ
    • 1925年、オクラホマ州ガスリーの精神病院を訪れた考古学者の「わたし」は、地下病室に潜む人とも何ともつかない存在を目撃する。
      マクニール院長が語るのは36年前の奇怪な事件だった。1889年、オクラホマに新天地を求めたデイヴィス夫妻。
      夫ウォーカーは蛇への異常な恐怖を抱き、邪神イグの伝説におびえていた。
      妻オードリーがガラガラ蛇の仔を殺した瞬間、夫婦の世界に亀裂が走る。
      イグの報復を恐れながら過ごす夜々の果てに待つ想像を絶する運命。
      36年後に精神病院に収容された「何か」の正体とは。
  • 閉ざされた部屋」 ラヴクラフト&ダーレス
    • 幼い頃からダンウィッチの不気味な雰囲気を嫌い遠くへ逃れたアブナー・ウェイトリー。
      祖父ルーサーの遺言により家を相続し、時が止まったような屋敷に足を踏み入れる。
      その家にはサリー叔母を監禁していた部屋があったが、アブナーは最期まで叔母の姿を見たことがなかった。
      祖父からの遺書には水車小屋の破壊が指示されていた。
      サリーはインスマスの親戚を訪れた後から様子がおかしくなったという。
      資金のために戻ったアブナーがサリーの部屋に入ると魚の異様な臭気が漂い、窓の外では夜鷹と蛙の不気味な合唱が響く。
  • 「クトゥルー神話画廊Ⅰ」 大瀧啓裕

出版社:青心社

発売日:1989/11/1

ページ数:334ページ

価格:紙版:814円/電子版:660円

良い点

  • ラヴクラフトの「闇をさまようもの」は後のクトゥルー作品に多大な影響を与えた重要作品で、ナイアーラトテップを上回る敵役として評価が高い
  • 最初の三篇は作者同士のお遊びと手記風の語り口が相まって、優れたフェイクドキュメント的リアリティが醸し出されている
  • ロバート・ブロックの「尖塔の影」は対決場面の緊張感と魅力溢れる敵役の描写が素晴らしい
  • R・E・ハワードの「アッシュールバニパルの焔」は手に汗握る冒険活劇譚として多彩な魅力
  • 「イグの呪い」は実質ラヴクラフト作品でありながら導入が冗長でなく、蛇のタタリという日本人にも馴染みやすい題材
  • 終盤のサスペンス描写が圧巻で、収録作品が多彩で飽きさせない構成

気になった点

  • 「イグの呪い」はサイコホラー色が強く、クトゥルー神話らしさを感じにくい場合がある
  • 作者同士のお遊び要素が強い作品は、背景知識がないと楽しみにくい可能性
  • 一部作品は導入部分が長く感じられる場合がある

こんな人におすすめ

  • ラヴクラフトとブロックの友情エピソードに興味がある人
  • 後のクトゥルー作品に影響を与えた重要作品を読みたい人
  • フェイクドキュメント的なリアリティのある作品を求める人
  • 緊張感のある対決シーンや魅力的な敵役を楽しみたい人
  • 冒険活劇要素のあるクトゥルー作品を読みたい人

本巻は、ラヴクラフトとブロックの友情から生まれた作品群を中心に、クトゥルー神話の豊かな多様性を示す短編集となっている。

「闇をさまようもの」は後のクトゥルー作品に多大な影響を与えた記念碑的作品として、神話体系における重要な位置を占めている。作者同士の交流から生まれたフェイクドキュメント的なリアリティと、緊張感溢れる対決シーンが、クトゥルー神話ならではの魅力を形成している。

大瀧啓裕氏の「神話画廊Ⅰ」と合わせて、視覚的にも神話世界を楽しめる構成となっており、クトゥルー神話作品理解の基礎となる一冊といえる。