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【読了ガイド】『クトゥルー1』│収録作品・購入方法まで紹介

【読了ガイド】『クトゥルー1』│収録作品・購入方法まで紹介

クト1

本作は、クトゥルフ神話の世界への理想的な1冊。収録作品の筆頭を飾る「クトゥルーの呼び声」は、クトゥルフ神話体系を理解するための必読作品。太平洋の彼方に眠る古き神の恐怖を描いた、ラヴクラフトの代表作中の代表作がここから始まる。

  • クトゥルーの呼び声」 H.P.ラヴクラフト
    • 主人公サーストンは、亡くなった大叔父エインジェル教授の遺品を整理中、異様な資料群を発見する。
      彫刻家ウィルコックスの奇怪な作品と夢の記録、そこに記された謎の言葉「クトゥルー・フタグン」。
      警視正ルグラースもまた、ルイジアナ沼地のカルト教団が同様の呪文を唱える儀式を目撃していた。
      調査を進めるサーストンは、教団の儀式と同日に帰還した一隻の船の存在を知る。
      人知を超えた何かの実在を確信していく彼だが、真実に近づくほど世界の常識は崩壊していく。果たして人類は、この途方もない真実を受け入れられるのか。
  • 破風の窓」 ラヴクラフト&ダーレス
    • 従兄弟ウィルバーの死から一ヶ月後、私は彼の遺した200年の歴史を持つ古い家に引っ越した。
      大幅に改修された家で異様に入念に作り込まれていたのは、屋根裏の破風の部屋だけだった。
      丸窓には曇りガラスがはめられ、ウィルバーは「レンのガラス」や「ヒヤデスで作られたもの」と呼んでいた。
      真夜中に破風の部屋の窓から不気味な音が聞こえ始める。
      隠し引き出しから発見したウィルバーの手紙には「破風の窓は必ず破壊すること」と記されていた。
      魔導書の中の「ヒヤデス」という単語が不安と恐怖を呼び起こす。
  • アロンゾ・タイパーの日記」 ウィリアム・ラムリー
    • 1908年4月17日、オカルト学者アロンソ・タイパーは未知なる知識への渇望に駆られ、コラズィン村の古びた屋敷に足を踏み入れる。
      かつてヴァン・デル・ハイル家が住んでいたこの屋敷には「古のもの」が眠っているという。
      迫るヴァルプルギスの夜までに謎を解き明かそうとするタイパー。地下室で見つけた錠のかかった鉄扉の向こうから不気味な音が響く。
      家系図の謎の入婿「アドリアン・スレート」、クラエス老の手記、全てが神秘都市イアン=ホーへ繋がっていた。
      ついに「知識を与えてくれるもの」を召喚する呪文を発見するが、それには致命的な欠陥があった。
  • ハスターの帰還」 オーガスト・ダーレス
    • エイモス・タトルの死がハドンを奇妙な恐怖の連鎖へ引きずり込んだ。
      遺言書には甥ポールに財産を相続させる前に屋敷を破壊し、書物を全て処分するよう記されていた。
      エイモスの死後、屋敷の地下から何かが這うような粘り気のある音が聞こえ始める。
      死体検視時、エイモスの遺体は時間経過で魚のような特徴を帯びていった。
      遺言を無視して屋敷を引き継いだポールは魔導書を読み漁り、「名付けられざるものに安息所を与えよ」という謎めいた返信を受け取る。
      ハドンは書物とメモを照らし合わせ、エイモスがハスターの安息所を用意しようとして、別の存在を呼び寄せた恐るべき真実に辿り着く。
  • 無人の家で発見された手記」 ロバート・ブロック
    • 12歳のウィリー・オズボーンは、祖母を亡くした後ルーシーおばさんとフレッドおじさんの山の家に引き取られる。
      祖母は生前、ルーズフォードの山の沼地にある古い祭壇と生贄の儀式、そして「あいつら」と呼ばれる土地の存在について語っていた。
      10月のある夜、好奇心から森に入ったウィリーは、血が滴る音と呪文のような唸り声を聞き、翌朝現場で緑のねばねばした物質と大きな足跡を発見する。
      やがてフレッドおじさんが迎えに出かけたまま帰らず、馬だけが戻ってきた。
      ルーシーおばさんも連れ去られる悪夢を見た翌朝に姿を消し、井戸の水まで緑色に変わっていた。
      恐怖に駆られたウィリーがキングスポートへ逃げようとした時、前方から一人の人間が近づいてきた。
  • 博物館の恐怖」 ヘイゼル・ヒールド
    • ロンドンのサウスウォーク・ストリート地下にあるロジャーズ博物館の特別室には、冒涜の神々を模したおぞましい蝋人形が並んでいた。
      オカルトマニアのジョーンズは館長ロジャースと親しくなるが、軽はずみな一言で関係が一変する。
      怒ったロジャースは展示品の一部が人工物ではないと告白し、禁断の書物を解読して北極地下の神を発見したと主張する。
      次第に興奮するロジャースは自らを神の神官と名乗り、ジョーンズに「博物館で一晩逃げ出さずに過ごせるか」という奇妙な賭けを持ちかける。
      蝋人形たちの間で過ごす恐ろしい夜が始まる。
  • ルルイエの印」 オーガスト・ダーレス
    • 祖父の厳格な警告により海から遠ざけて過ごしてきた主人公は、叔父シルヴァンの死後、インスマスと海辺の二軒の家を相続する。
      海辺の家には円盤状の模様が刻まれた絨毯や壁掛けがあり、中央には魚類とも爬虫類とも判別しがたい人型の生物が描かれていた。
      町で出会ったアダ・マーシュは家の中を熟知しており、「二つの家系は地球誕生の頃から結びついていた」と告げる。
      叔父の調査記録には1797年のマーシュ船長の妻と両家の「呪い」、そして「ルルイエの場所を見つけクトゥルフに会う」という謎めいた言葉があった。
      アダは絨毯の模様が「ルルイエの大いなる印」だと静かに告げた。
  • 「クトゥルー神話の神々」 リン・カーター
  • 「クトゥルー神話ー遠近法の美学」 大瀧啓裕

出版社:青心社

発売日:1988/12/1

ページ数:338ページ

価格:紙版:814円/電子版:660円

良い点

  • 『破風の窓』などラヴクラフト/ダーレスの傑作が収録されており、ラヴクラフトらしい恐怖の雰囲気と世界観が見事に表現されている
  • ラヴクラフト以外の様々な作家の作品も読める多様性がある
  • クトゥルー神話の体系的な作品集として、オリジナル作家から後続作家まで幅広くカバーしている
  • 大瀧啓裕による翻訳は名訳との評価もある
  • 読みにくさが逆に不気味さを倍増させる効果を生んでいる
  • 国書刊行会の『ク・リトル・リトル神話体系』などと合わせ読みすることでコズミックな感覚を理解できる

気になった点

  • 翻訳が読みにくく、日本語として最低限のセオリーが成立していない部分がある
  • 内容や雰囲気が似通ってしまい、作品間の区別がつきにくい
  • ラヴクラフト本人以外の「二次創作物」的な作品による水増し感がある
  • アマチュア作品レベルのものまで含まれており、読む価値に疑問符がつく作品もある

こんな人におすすめ

  • ラヴクラフトの世界観や恐怖の雰囲気を味わいたい人
  • クトゥルー神話を体系的に学びたい人
  • 多少読みにくくても雰囲気重視で楽しめる人
  • ラヴクラフト以外の関連作家の作品にも興味がある人
  • 翻訳の質よりも作品の網羅性を重視する人
  • 他のクトゥルー神話関連書籍と比較検討してから購入を決めたい人

ラヴクラフト以外にも、ダーレス、ラムレイ、ブロックといった神話作家たちの傑作が勢揃い。それぞれ異なる文体と恐怖のアプローチで、クトゥルフ神話の豊かな多様性を実感できる。読み進めるうちに、きっと好みの作家に出会えるだろう「破風の窓」は映画化もされているほどの名作で、ラヴクラフト&ダーレスのコラボレーションも見逃せない。

特に注目すべきは、リン・カーターの「クトゥルー神話の神々」と大瀧啓裕氏の「遠近法の美学」。これらの解説・評論は他の短編集には収録されておらず、神話体系の理解を深める貴重な資料となっている。作品を読んだ後にこれらを読み返すことで、クトゥルフ神話の奥深さがより鮮明に見えてくる。