本作は14,940語の短編小説で、1932年2月に執筆された。初出は1933年、WTの7月号で、単行本初収録はO。校訂版はMM、DWHに詳註版が収録されている。
物語では超空間の宇宙的景観が鮮烈に描かれているが、一方でラヴクラフトはプロットの細部には充分な注意を払っていなかった。例えば、「古のもの」の登場や赤ん坊の誘拐の理由、ラヴクラフトの無神論的な立場にも関わらずキザイアが十字架に怯える描写など、細部の説明が不足している。また、ナイアルトホテップが暗黒の男という化身の姿で登場したり、ブラウン・ジェンキンの深淵からの脱出やギルマンの心臓を喰い破る理由には論理的な説明がない。ラヴクラフトは衝撃的な場面に焦点を当て、それらの場面の論理的な結びつきには、あまり注意を払っていないように見受けられる。
- ウォルターギルマン…主人公 ヘーバリル出身 大学生
- キザイア・メイスン…彼女の曲がった背中や長い鼻、皺が寄った顎は見間違えようもなく、形のくずれた褐色の服も記憶にある通りだった
- 黒い男…ニャルラトテップ
- ブラウン・ジェンキン…大きいネズミ 手足は人間と同じ
- フランク・エルウッド…友人で同じ下宿に住んでいる
- ジョー・マズレヴィチ…同じ下宿の織機修理工
- 聖スタニスラウス教会のイヴァニツキ神父…十字架を作った人
- ポール・コインスキ…同じ下宿の住人
- ウォルドロン…ギルマンの世話人?
- デロシェ…ギルマンの下の階の住人
- エラリー教授…ミスカトニック大学の教授
- アナスシタア・ヴォレイコ…息子を誘拐された
- ラディスラス…アナスタシアの息子 2歳
- メアリー・チャネク…アナスタシアの隣人
- ピート・ストワツキ…アナスタシアの愛人
- マルコブスキ医師…ギルマンを看病した
- 古のもの
【舞台】
- 1929〜31年くらい アーカム
ミスカトニック大学の学生ウォルター・ギルマンは、魔女の伝説が残る奇妙な角部屋に引っ越す。その決断が、彼の人生を予想外の方向へと導いていく。
新居での生活が始まると、ギルマンの夜は不穏な様相を帯び始める。夢の中で、彼は「ブラウン・ジェンキン」と呼ばれる、手の生えた巨大な鼠に追われるようになる。現実と夢の境界が曖昧になっていく中、彼の精神は徐々に蝕まれていった。
夢遊病の兆候まで現れ始めたある日、ギルマンの夢はさらに奇怪な展開を見せる。人知を超えた不思議な空間で、彼は「古のもの」の像を手に取る。しかし、目覚めた瞬間、夢の中で拾ったはずのその像が、現実の部屋に転がっていたのだ。
この衝撃的な発見は、ギルマンの「夢」の本質に疑問を投げかける。彼が見ている夢の正体とは何か。そして、彼を追い詰める不可解な存在の目的は何なのか。現実と夢が交錯する中、ギルマンは徐々に真相に近づいていく。
魔女の伝説、異次元空間、そして人知を超えた古の存在。これらが絡み合い、ギルマンの周りで不可解な出来事が次々と起こっていく。彼の運命はどのような結末を迎えるのか――。