クトゥルフ神話とは
クトゥルフ神話は、20世紀アメリカの作家H・P・ラヴクラフト(1890-1937)によって創始され、その後多くの作家たちによって発展を遂げた共有世界観による物語群である。人類以前に地球を支配した異形の存在たちと、その存在を知った人類の恐怖を描く独特の宇宙的恐怖(コズミック・ホラー)文学として知られている。
基本的世界観
クトゥルフ神話の世界では、人類誕生以前の太古、地球は「大いなる古き神々」と呼ばれる宇宙的存在によって支配されていた。これらの存在は現在、深海や地底、異次元などに潜伏または眠りについているが、「星辰の巡りが正しくなれば」再び地上に現れ、支配を取り戻すとされる。この世界観において人類は、広大な宇宙の中でごく取るに足らない存在として描かれ、古き支配者たちの本質を理解することすら困難とされている。この圧倒的な真実を知った人間は、自身の無力さと宇宙の無関心さに直面し、狂気へと追い込まれていく。
神話世界の構成要素
クトゥルフ神話における代表的な神的存在として、海底都市ルルイエで眠るクトゥルフ、宇宙の中心で狂い踊る盲目の白痴神アザトース、全知全能の「門と鍵の管理者」ヨグ=ソトース、そして他の神々の使者として人類の前に姿を現すナイアルラトホテプなどが挙げられる。
これらの存在に関する知識は、アブドゥル・アルハザードによって著された禁書『ネクロノミコン』や、ヒュペルボレイオス大陸の賢者エイボンの著した『エイボンの書』、地球の最古の歴史を記した『ナコト写本』などの秘められた書物によって伝えられている。 物語の多くは、架空のマサチューセッツ州の大学町アーカムや、没落した港町インスマス、秘められた恐怖が潜む田舎町ダンウィッチなど、ニューイングランド地方を舞台に展開される。
神話の発展と継承
クトゥルフ神話の特徴的な点は、その発展過程にある。ラヴクラフトは1920年代から1930年代にかけて執筆した作品群で基本的な設定を確立したが、その際に厳密な体系化を避け、暗示的な描写を重視した。同時代の作家たちとの協力関係の中で、クラーク・アシュトン・スミスやロバート・E・ハワードらと設定を共有し、世界観を拡大していった。
ラヴクラフトの死後、オーガスト・ダーレスによる体系化と出版活動を経て、新世代の作家たちによる創作が続けられ、後にはTRPGやその他メディアでも展開されるようになった。
現代における意義
クトゥルフ神話が90年以上にわたって影響力を保ち続けている理由として、その多様な解釈可能性が挙げられる。科学的な解釈から神秘的な解釈まで幅広い展開が可能で、作家ごとに異なる切り口での創作が行われている。また、人類の無力さと宇宙の無関心という根源的なテーマ、そして意図的に詳細を明かさない描写による読者の想像力の活用が、作品の普遍的な魅力となっている。
さらに、小説以外の様々な形式での表現やインターネットによる新たな創作・共有の場の提供により、既存の設定を自由に解釈・改変できる開放性と、新しい創作者が参加しやすい構造を持つに至っている。
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