霊廟

霊廟

The Tomb

全集7 ハワード・フィリップ・ラヴクラフト
概要
登場人物
あらすじ

本作は4,190語の短編小説で、1917年6月に執筆された。初出はVagrant 1922年3月号で、WT 1926年1月号に再掲された。単行本初収録はO、校訂版はD、詳註版はTDに収録されている。

ラヴクラフトは物語の着想について、1917年6月に伯母のリリアン・クラークと共にスワンポイント墓地を訪れ、1711年と刻まれた墓石を目にしたときのことだったと記している。彼は1920年1月、ギャラモ宛ての手紙で、その経験から「霊廟」の執筆に取り掛かったと述べている。この墓石は、クラーク家の先祖、おそらくサイモン・スミスのものであると推測される。

ウィリアム・フルワイラーは、作中の「ハイド」という名前の使用がロバート・ルイス・スティーヴソンの『ジキル博士とハイド氏』を踏まえたものであり、両作品とも分身のテーマを扱っていると指摘している。また、エドガー・アラン・ポーの「リジイア」からの影響も考えられる。

作中に登場する「霊廟における酒盛り歌」は、物語本体とは別に、おそらく数年前に書かれたものと推測される。JHLが所蔵する手紙の中では、この詩は「Gaudeamus」(騒宴)と題されており、ラヴクラフトが自身より劣ると考えていた同題の詩への応答として書かれた可能性がある。

ウィル・マレーは、この歌がトーマス・モートンの「New English Canaan or New Canaan」1637年版に収録されている類似の歌を参考にしたものと推測しているが、リチャード・ブリンズリー・シェリダンの『悪口学校』1777年版の歌の方が、より直接的な影響源である可能性が高い。

  • ジャーヴァス・ダドリイといって、ごく幼いころから夢想家であり神秘家 二十一歳
  • 医師
  • 郷士ブルースター…1711年に死亡
  • グッドマン・シンプスン
  • ジェフリイ・ハイド卿…1640年に死亡
  • ラチャスター卿ジョン・ウィルモット
  • ジョン・ゲイ、マシュー・プライア
  • ジャーヴァス・ハイド

ジャーヴァス・ダドリイ、孤独な少年の奇妙な半生。彼の運命は、近隣の木々に囲まれた窪地で見つけた霊廟によって大きく変わる。

ハイド家の亡骸が眠るその霊廟。稲妻に打たれ全焼した邸宅の悲劇を秘めた場所に、10歳のダドリイは不思議な魅力を感じ取る。半開きの扉、重たい鎖と南京錠。少年の好奇心は、その向こう側へと強く惹かれていく。

時が経つにつれ、ダドリイに奇妙な変化が現れる。本にも記されていない古の知識。そして、ある夜聞こえた不気味な声—ニューイングランドの方言を操る複数の存在。

屋根裏の朽ちた箱から見つかった鍵。それは、禁断の扉を開く運命の鍵だった。

霊廟で過ごす時間が増えるにつれ、ダドリイの性格は一変する。浮かれ騒ぐ様子、ジョージ王朝時代の酒盛り歌。そして、雷雨への異常な恐怖。

両親が雇った監視役の不可解な報告。霊廟の中と外で、同時に存在するかのようなダドリイ。

霊廟の中で少年を待ち受けていたものとは。そして、彼の中に芽生えた多重の人格の正体とは—。

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