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忌み嫌われる家

忌み嫌われる家

The Shunned House

ハワード・フィリップ・ラヴクラフト 全集7
概要
登場人物
あらすじ

本作は10,840語の中編小説で、1924年10月中旬に執筆された。最初はブックレットとして印刷されたが、マサチューセッツ州アソールでW・ポール・クックにより1928年に印刷されたものの、製本・配布には至らなかった。WT 1937年10月号で再び活字化され、単行本初収録はOである。校訂版がMMに、詳註版がAn2、PZ、DWHに収録されている。

この物語は、プロヴィデンスのベネフィット・ストリート135番地に実在する家を題材としている。しかし、着想自体はラヴクラフトが1924年10月にニュージャージー州エリザベスで目にした類似の家に由来する。ラヴクラフトは「リリアン・D・クラーク」宛ての書簡で、その家について詳細に描写している。

プロヴィデンスの家は1763年頃に建てられた二階建てで、地下室や屋根裏部屋を備えていた。作中の描写は概ね現実の家と一致しているが、常に人が住んでいたという点では異なる。登場人物のエラヒュー・ウィップルは、ラヴクラフトの伯父「フランクリン・チェイス・クラーク」がモデルとされている。

物語に登場する歴史的細部の多くは正確である。例えば、ベネフィット・ストリートの改修、1815年の大洪水、さらには1892年のエクシターでの迷信的な慣習についての言及も事実に基づいている。

作中で最も興味深い歴史的記述は、ルレ姓の二人の人物に関するものだ。エティエンヌ・ルレは架空の人物だが、ジャック・ルレは実在した。ラヴクラフトのジャック・ルレに関する記述は、主にジョン・フィスクの著作『Myths and Myth-Makers』(1872年)に依拠している。

本作品は、吸血鬼の存在を先進的科学概念で説明しようとする試みを通じ、超自然的物語から擬似サイエンス・フィクションへの移行を示している。相対性理論や量子力学への言及は、当時の科学の最前線を反映している。

出版の経緯については複雑で、W・ポール・クックによる当初の計画は実現せず、後年になって「R・H・バーロウ」や「オーガスト・ダーレス」らの尽力により、限定的な形で頒布された。1965年には、おそらく英国で偽造版が作られたとされている。

  • 語り手
  • ウィップル…叔父

【舞台】

  • 1750〜1850年 プロヴィデンス

ベネフィット・ストリートに佇む不吉な家。幽霊屋敷ではないが、住人たちを蝕む奇妙な病。その正体は、世代を超えて語り継がれる恐怖の源泉だった。

語り手は少年時代から、この家に魅了されていた。大人になった彼は、伯父エラヒュー・ウィップルの研究を通じて、家の秘密に迫っていく。

系譜学的記録の奥に潜む恐るべき真実。生気を吸い取る名状しがたき存在。そして、土間に蠢く不気味な何か。これらの謎が、徐々に明らかになっていく。

1763年以降の家の歴史。死の間際に喋り出す粗野なフランス語。そして、1686年にフランスからやってきた邪悪な男、エティエンヌ・ルレ。さらに遡ると、ライカントロピーで告発されたジャック・ルレとの関係も浮かび上がる。

語り手と伯父は、家に潜む恐怖の正体を暴き、消滅させようと決意する。しかし、彼らの行動が引き起こす結果とは—。

世代を超えて受け継がれる邪悪な存在の正体とは。そして、人間の好奇心が開いてしまった、取り返しのつかない扉の向こうに待つものとは。

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