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住古の民

住古の民

The Very Old Folk

ハワード・フィリップ・ラヴクラフト 新訳2
概要
登場人物
あらすじ

この作品は2,500語の短編小説で、1927年11月3日に執筆された。Scienti-Snaps 1940年夏号に初出し、校訂版がMWに収録されている。

実はこの「物語」は、ラヴクラフトがハロウィーンの夜に見た印象的な夢をドナルド・ウォンドレイ宛ての手紙で語ったものだ。この夢は、ハロウィーンの季節とヴェルギリウスの『アエネーイス』を読んだことが原因だったとされる。

ラヴクラフトは他の文通相手にもこの夢について語っており、作品に取り入れたいと何度か述べていた。フランク・ベルナップ・ロングは1929年に、この夢の内容を自身の小説『恐怖の山』に使用する許可をラヴクラフトから得ている。

ラヴクラフトによると、夢の中の出来事は共和制末期、つまりアウグストゥスがローマ皇帝に即位する紀元前27年以前の時代設定だという。

  • ルキウス・カエリウス・ルフス…主人公、属州勤務の財務官
  • P・スクリボニウス・リボ地方総督…タラコ出身
  • セクストゥス・アセリウス…軍団司令官
  • グナエウス・バルブティウス…軍団長
  • ティベリウス・アナエウス・スティルポ…造営官
  • ヘルウィア…造営官の母親
  • スキピオ…軍人
  • アンティパトロス…ギリシャ人奴隷
  • スクリボニウス…地方総督
  • アセリウス
  • A・ポストゥミウス…執政官
  • ウェルセリウス…ローマ人の若者
  • D・ウィブラヌス

【舞台】

  • 1927年 ローマ帝国 ポンペロ

ローマ帝国の威光が輝くヒスパニア・キテリオル。その片隅にあるポンペロという小さな町で、異様な空気が漂っていた。地方総督P・スクリボニウス・リボは、この不穏な状況を憂慮し、鋭い洞察力で知られる審問官L・カエリウス・ルフスを呼び寄せる。

町を見下ろす丘には、長年にわたり奇怪な噂が絶えなかった。そこに棲むのは「古えの民」と呼ばれる山岳民。彼らが純粋な人間であるかどうかさえ定かではない。毎年5月と11月の朔日の前夜、彼らは村人を何人か連れ去っていくのだ。

しかし、今年は様子が違った。11月の例の日を過ぎても、姿を消した村人は一人もいない。この異変に、ルフスは不吉な予感を覚える。表面上の平穏さとは裏腹に、さらに恐ろしい事態が迫っているのではないか。

ルフスは幕僚のセクストゥス・アセリウスや軍団長クナエウス・バルブティウスと熱い議論を交わす。彼の主張は明確だった。ローマ軍は「古えの民」に対し、今こそ強硬な手段を取るべきだと。

激しい論争の末、ルフスはついにリボの同意を得る。そして実行の時…。

理性と野蛮、文明と自然、そして人間の限界が鋭く問われる。

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