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ファラオと共に幽閉されて

ファラオと共に幽閉されて

Imprisoned with the Pharaohs

ハワード・フィリップ・ラヴクラフト 全集7
概要
登場人物
あらすじ

本作は10,950語の中編小説で、1924年2月にハリー・フーディーニのために代筆された。『ファラオと共に幽閉されて』の題名でWT 1924年5・6・7月合併号に初出し、同誌1939年6・7月合併号に再掲された。校訂版がDに、詳註版がDTに収録されている。

ラヴクラフトは手紙で、この作品の執筆経緯を詳しく回想している。WTの経営難を打開するため、J・C・ヘナバーガー社主がフーディーニを起用する案を思いついたという。フーディーニのコラムは好評を博し、彼の名義で短編小説も二つ掲載されたが、これらはラヴクラフト以外の人物による代作と推測される。

2月中旬、ヘネバーガーはラヴクラフトに『ピラミッドの下で』の執筆を依頼した。フーディーニは実際にピラミッド内の「キャンベルの闇」と呼ばれる空間に閉じ込められた経験があると主張していたが、ラヴクラフトは調査の結果、この話が創作であると判断。ヘネバーガーの承諾を得て、自身の想像力を加えて物語を膨らませた。

当初、作品は「フーディーニおよびH・P・ラヴクラフト作」として発表される予定だったが、一人称で書かれていたため読者の混乱を避けるためラヴクラフトの名は省かれた。ラヴクラフトは報酬として100ドルを受け取り、2月末に急いで執筆を終えたが、原稿を駅に置き忘れるというハプニングがあった。

物語は緊迫感があり、驚きの結末が用意されている。エジプトに関する情報は、ラヵクラフトの書斎にあった本や、メトロポリタン美術館での実見に基づいている。また、テオフィル・ゴーティアの「クレオパトラの一夜」からも着想を得たと思われる。

文体は意図的に装飾過多であり、当時最も勇敢とされたフーディーニが物語中で3回も失神する設定には、皮肉が込められていると考えられる。

《訳註》「キャンベルの闇」は、ケオプス王のピラミッド第五層空間を指し、発見者のパトリック・キャンベルにちなんで命名された。

  • 語り手
  • ありふれたトリックで乗船客を驚かせようとするマジシャン
  • アブドゥル・レイス・エル・ドログマン
  • 謎の巨人
  • ニトクリス

【舞台】

  • 1910年以降 エジプト カイロ

ハリー・フーディーニ、縄抜けの名人が遭遇した、エジプトでの不可思議な冒険。

大ピラミッドの頂上で繰り広げられた奇妙なボクシング試合。その直後、アブドゥル・レイス・エル・ドログマンら一味に捕らえられ、スフィンクス神殿の底知れぬ奈落へと投げ込まれるフーディーニ。

彼の脳裏から離れない一つの疑問—「スフィンクスの真の姿とは何か」。その答えを求め、同時に脱出を図るフーディーニの前に広がるのは、想像を絶する光景だった。

エッフェル塔をも凌ぐ巨大な石柱が立ち並ぶ地下洞窟。そこに蠢く、おぞましく合成された生物たち。

古代エジプト人の死生観、「カー」と呼ばれる霊魂の遍歴。そして、神官たちが作り上げたという「合成ミイラ」の伝説。

フーディーニの思索は、彼の目の前に現れた存在によって突如として中断される。スフィンクスの謎を追い求めたフーディーニが直面する、想像を絶する真実とは—。

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