本作は1939年、WTの3月号に掲載された。「ハスターの帰還」は、ラヴクラフトの「インスマスの影」の後日談で、「クトゥルフの呼び声」が作中に登場し、ハスターとクトゥルフの敵対関係や神話の要素が絡む。
「ハスター」がクトゥルフ神話において曖昧だった存在から具体的な邪神として描かれ、異名や幽閉された設定が与えられている。ハスターの名前はラヴクラフトの先行作品に名前だけ登場し、ダーレスはこれを発展させ、アンブローズ・ビアスやロバート・W・チェンバースなどの先行の作家たちの要素を統合して新たなキャラクターとして描いた。
「ハスターの帰還」では、風を司るハスターと水を司るクトゥルフの敵対関係や、四大霊、旧神と旧支配者の対立に触れられている。タイトルはハスターが追放された後に地上に帰還する出来事を指し、「ハスターにとっての安息所は何か」がテーマである。
- ハドン…ポールの友人
- エイモス・タトル…ポールの叔父
- ポール・タトル
- エフレイム・スプレイグ
- ランファー博士…ミスカトニック図書館の館長
- ウォルトン判事
- クトゥルー
- ハスター
- 旧神
エイモス・タトルの死は、ハドンを奇妙な恐怖の連鎖へと引きずり込んだ。あの日、エイモスは死の床にあり、エフレイム・スプリング医師とともにハドンも呼ばれた。衰弱した彼は遺言書を私に託した。その内容は明確だった—甥のポールに財産を相続させる前に、屋敷を徹底的に破壊し、所有する書物を全て処分すること。また、ミスカトニック大学図書館から借りている本を必ず返却するよう指示があった。
エイモスは生前、世界中から奇妙な魔導書を収集していた。彼の死後、私は指示通りネクロノミコンを返却しに行ったが、そこでランファー館長から厳しく問いただされた。驚くべきことに、この書物は持ち出し厳禁の禁書であり、エイモスが盗み出していたのだ。
不気味だったのは、エイモスの死後、屋敷の地下から聞こえ始めた音だった。何かゼリー状のものが這うような、粘り気のある足音。しかし、エイモスの遺体が運び出された後、その音は不思議と止んだ。
不可解な出来事は続いた。エフレイム医師がエイモスの死体を検視した時、彼は「すぐに埋葬せよ」と言った。エイモスの遺体は、時間の経過とともに人間の姿を失い、魚のような特徴—鱗のような皮膚、突出した目—を帯びていったのだ。
しかし何も知らないポールは、ウォルトン判事の助言もあり、「エイモスの精神状態は錯乱していた」として遺言を無視。屋敷をそのまま引き継いだのだった。
ある時、ハドンがアーカムで用事を済ませていると、再びランファー館長から連絡があった。またもネクロノミコンが盗み出され、今度は犯人がポールだというのだ。さらに気がかりなことに、最近ポールの屋敷から奇妙な音—何かが這うような音—が聞こえるという噂が近隣で広まっていた。
ハドンはポールに会いに行った。彼の書斎には怪しげな古書が山積みになっていた。話を聞くと、ポールは「叔父の遺言には屋敷を破壊する理由が書かれていなかった」ため、その謎を解明しようと魔導書を読み漁っていたのだ。彼はルルイエ異本を売ったチベット在住の中国人に連絡を取ったところ、謎めいた返信が届いたという。
「名付けられざるものに安息所を与えよ」
この意味を理解するため、古い神話を調べると、クトゥルフとハスターが太古の昔から対立していること、そして「名付けられざるもの」がハスターの別名であることが判明した。
私は書物とエイモスのメモを照らし合わせ、恐るべき真実に辿り着いた。エイモスは「名付けられざる者」ハスターの安息所を用意しようとしていたのだ。しかし、その過程で意図せず別の存在
—クトゥルフを呼び寄せてしまったのかもしれない。